「この間は、取り乱してしまってごめんなさいね」


ハジメのお母さんは言った。


「私こそ、勝手に部屋に入ってしまってごめんなさい」


「いいのよ。済んだことだから」


「あひるのペスも、勝手に連れてきてしまってごめんなさい」


「まあ!あひるを連れて行ったのはあなただったのね!」


「す……すいません」


「まあ、済んだことは良いのよ。影丸は連れていかないでちょうだいね」


「もしかして、影丸も盗んだ鳥なんですか」


「あ……。あはは。とりあえず、ミチコちゃんも、しましまぼうやも中にお入りなさい」


ハジメのお母さんはそう言うと、そそくさと奥に引っ込んで行った。


「影のある女性って、ちょっと格好良いですね」

平田が言う。


ハジメの部屋に行くと、ハジメは、縛られたオード卵の上に腰掛けて、編み物をしていた。


「ハジメっ」


声をかけるとハジメは顔を上げた。


「ミチコ……と、平田君か」


「オード卵のことなんだけど」

と、私は切り出した。


「可哀相だから、樹海に捨てるのは中止にしない?」

「そうか……」


「なんだか、だんだん可哀相になっちゃったの」


「ミチコはやさしいんだな……わかったよ」


「みんなには、オード卵は行方不明になったって言ってあるの」


「なんで?」


「ハジメが山賊ってみんなには言ってなくて」


「そうか……」


ハジメは少し淋しそうな顔をした。