「ストップ!」


私は大きな声で言った。


二人の動きが止まる。


「吉川ヨシオ君をさらったのは、オード卵じゃないかもしれない……」

私は言った。


「じゃあ誰なんですか?」

「誰かはわからないけど、なんとなく、オード卵じゃないかもしれないって、ちょっと思った」


「なんて曖昧な……」

平田が言う。


「確かに、本当に知らなそうだな」


ハジメはそう言って、もう一発オード卵の腹を蹴った。


「だから、これ以上蹴らないで」


「わかったよ」


「で、オード卵は、どうするんですか」

平田が言う。


「けっ警察に突き出したって、証拠は出ないぜ」

オード卵が言う。


「きつい取り調べを受けて自白したら良いのよ!」

私が言うと、オード卵は鼻で笑った。


「山賊のこと、おいらが警察に話しちゃったら、まずいんじゃないか」


「確かに、まずいな」

ハジメが言う。


「だから、おいらを解放しろ!」


平田がオード卵の頭をはたいた。

多分、今の発言にむかついたのだろう。


「俺が引き取ろうか」

ハジメが言う。


「え。引き取るって?」


「足を伸ばして、富士の樹海に捨ててくるよ」


「死なない?」


「それは本人次第だ」


「そんな……」


「訓練して、手下にしても良いしな」

さすが山賊。

言うことが違う。


「やめてくれよ」

オード卵が言う。


「まっ、せっかくだし、死なせない程度に預かるよ」

ハジメはそう言うと、オード卵を担いで出ていった。