大学への帰り道。

なぜか機嫌を良くした平田、こんな時だというのに、はしゃいでいた。

ウルフに差し入れを喜ばれたのが、嬉しかったのかもしれない。


「ミミさんが穴堀ねえ……」

私はつぶやいた。


「リスの落し穴事件の完全な模倣ですよね!」

鼻の穴を膨らませて目黒さんが言う。


「でも、なんでウルフにそんなことするんだろう」


ウルフはリスの落し穴事件では、被害者だ。

落し穴を掘ったのは、ハム研なので、リス研のウルフに対して落し穴を掘る理由がわからない。


「リスの落し穴事件とは全くの無関係で、落し穴を掘る必要があったと考えるのが妥当ですね」

平田が言う。


「なんで落し穴なんだろ」

「今までは直接襲っていたのに、おかしいですよね……」

鼻をほじりながら平田が言う。


「ミミ助は、逃走する必要があったから、ウルフさんを待ち伏せる暇が無かった……とかじゃないですか?」

目黒さんが言う。


「わかんないなあ……」

私はため息をついた。


平田は、そんな私を見て、あからさまに何か閃いた顔をすると、おもむろに携帯電話を取り出した。


「もしもし。僕、平田でーす。ミミさんが行方不明になった件で聞きたいことがありまーす。協力してくださーい。一緒にミミさんを見つけましょーう。連絡してくださーい。……ウフフ」

嬉しそうにそう言うと平田は携帯電話をしまった。


「何やってんの?」


「オード卵さんに留守電入れられました」


「良かったね」


「はい」


「はあ……。まだ連絡が取れないかあ……」


「まあ、人生いろいろです。鶴見ミツルさんにも連絡してみます?」


「そうだね……」


平田は素早くウルフに電話をかけ、鶴見ミツルの連絡先を聞き出した。


「まあ、もうすぐ着いちゃうんで、部室からかけましょうかね」

平田はそう言って、スキップをした。