「ミミは落し穴を掘ったりはしないぜ」


「時間的には可能だよね」


「ミミはクラリネットをやっているから、手に豆が出来るようなことはしないはずだ」


「まあ、穴堀は似合わなそうだよね」


「いえ。嫉妬に狂った女はなんでもします!」


目黒さんが言う。


「しかも、あの土、結構硬いぜ。ミミの力じゃ短時間にあれだけ掘るのは大変なんじゃないかな」


「不可能を可能にするのが嫉妬の力です!」

目黒さんは顔を真っ赤にして言った。


「うーん」


「どうしたんですか。ミチコさん」


平田が言った。


「変だよね。ミミさんは、ウルフから連絡があって嬉しそうにしてたんだよね」

「いきなり呼び捨てか。大胆だな。まあ、そうだな。オレにはそう見えたな……いや、電話だから、見えはしなかったが」


「電話を切って、スコップとサボテンと鉛筆削りを持って、ウルフの家に行って、落し穴を掘る……。なんか変だよね」


「あの女は気が狂っているんです!キー!」

目黒さんが叫ぶ。



目黒さんは部室に置いてくれば良かった。

私は少し後悔した。