まさかミミがいなくなるなんて。


こんなふうに追い詰めたら、こうなることは予測できたはずだ。


家出ならまだ良いが、本当に自殺をしていたりしたら、大変なことだ。


私は平田と目黒さんに連絡をすると、身仕度を整え、弟を起こした。


「アネキ、なんだよう」


マルチボーダーのブリーフ一枚の弟に、ジーンズとTシャツを着せて、バイクにまたがらせた。


口には歯ブラシをくわえたままで、腕には枕まで抱えているが、お構いなしで、私は言った。



「橘!発進」


蜂模様の派手なバイクは、乾いたエンジン音を響かせ、発進した。


「大学までよろしく!」


「ぼへー」


「橘、しっかり!」


「ぼへー」


半分夢の中の弟に、なんとか大学まで送ってもらうと、私はハム研の部室に走った。


走ったところで、平田も目黒さんも、まだ着いていないはずなので、あまり意味は無いのだが、走らずにはいられなかった。



私は、誰もいない部室に駆け込んだ。

室内はひんやりとしていた。

おかしい。

クーラーのスイッチが入っていない部室は蒸し暑いはずだ。



先客がいる。