幸い、店には橋本ミミとオード卵の姿は無かった。


山嵐ノゾミと鶴見ミツルの二人だけだ。


山嵐ノゾミは何やら険しい表情をしている。



「山嵐様、どうかしたんですか」


平田が言う。


「ミミとオード卵が戻ってこないんだよね」


「ぎくっ」


「あはは。自分で『ぎくっ』って言っちゃってんの!?面白いよ」


「山嵐様、ありがとうございます」


「ミツルっちから聞いたよ。なんか、まずいことになったんだって!?」


「そうなんです。ついつい目黒さんがかっとなってしまって」


「なーんか、戻ってこないんだよね。そろそろ交替したいのに」


「僕の責任です」


「あはは。じゃ、おつり無しでも良い?」


「もちろんです」


「冗談、冗談だよ。あはは。代わりに焼そばとチョコバナナ買ってきてよ」


「はい!よろこんで!」


平田はそう言うと、小走りで買い出しに行った。


すっかり山嵐ノゾミの子分だ。


目黒さんはすごい形相で山嵐ノゾミを睨みながら、フランクフルトを3本口に入れている。

女の嫉妬は恐ろしい。