山賊眼鏡餅。

「やっほー!」

さりげなく声をかけると、ミミは笑顔で振り向いた。


「あ。ミチコさん」


「こんばんは」


「ど、どうしたんですか?」


「ちょっとぶらぶらしてたら、ミミさんがいたから声をかけたの」


「あれ?また会ったねえ」

オード卵が立ち上がって言った。


「こんばんは」


「一人?」


「あっ、えっと……今だけちょっと一人で……」


「ヒヒヒ」

金魚の入ったビニール袋を持って、鶴見ミツルはしゃがんだまま180度回転した。


「鶴見さん、こんばんは」


「ミチコちゃん、可愛い浴衣だねー」


「ありがとう……」


気持ちの悪い男だ。


「おいらたち、そろそろ仕事に戻んないといけないんだ」

オード卵が言う。


じんべいの中に、黄土色のタンクトップが見える。


こんな時も欠かさないとは、さすがだ。


「フランクフルト売れてる?」

私が言うと、3人は妙な顔をした。


そういえば、3人がフランクフルトを売る手伝いをしているというのは、こっそり仕入れた情報だった。


とんだ失態だ。


でも、ミミをゆさぶるという意味では良かったのかもしれない。


真っ青な顔をしている。


探られて困るようなことがあるから、動揺するのだ。


「わ、私、そろそろ戻ります」

小さな声でミミは言った。