「まあ、怪しいのはオード卵か鶴見ミツルの二人だよね」


「ちょっと待ってください。髪型が違うじゃないですか」


「髪型……確かに、二人は短髪だね」


「ヘルメットから長い毛が出ていたんですよねえ」


「あれ?平田は見てないの?」


「僕は見ていません。道端で気を失って、気付いたら山にいたんです。財布の現金も無くなっていました」


「え。私はお金取られなかったよ」


「ラッキーでしたね。僕は2万円と腕時計を取られました」


「そんなに!」


「金持ちも大変だな」

ハジメが言う。


「……で、髪型だよ。髪型」


「そうですね。髪が長いのは、山嵐ノゾミさんとミチコさんと橋本ミミさんと目黒さんですかね」


「あー。でも、変装してカツラを被っている可能性もあるよね」


「確かにそうですね」


「あ!山賊のお母さんは直接犯人に会ってるんじゃないですか!?」


「いや……。それはないな」


「なんでですか」



「山賊と一般人との取引は、お互いに姿を見せないのが決まりなんだ」


「じゃ、声を聞いたりしてないですか」


「声も発しない。必要なのはどんぐりだけだ」


「つまんないですねえ」


「大体、警察はどうしてるんだろうね」


「人が死んだわけじゃないてすからねえ」


「うーん。男か女かもわからないからなあ」


「ぬかりないですねえ。自分の痕跡を決して残さないですからね」


「あ」


「ミチコさん、どうしました?」


「手紙、貰ってたよね。犯人から」


「脅迫状ですか」


「手がかりになりそう」


「沼袋部長が持ってましたよね。電話してみます」


平田はそう言うと、素早く私の携帯電話から軽井沢の沼袋部長に電話をかけた。


「部室の本棚にあるそうですよ」


電話を切ると、平田はそう言った。