『もしもしー!』


切れ気味で、目黒さんは言った。


「目黒さん、どうしたの?」


『ミチコ先輩!聞いてくださいよー!』


「どうしたの?」


『たった今、ひったくりにあったんです!』


「えー!大変!」


『おまけに胸まで触られて……。多分、前と同じ犯人です!』


「災難だったね……。そうだ!平田見つかったよ!」

『本当ですか!?』


「うん!今ここにいるよ」

『え!ミチコ先輩と、そういう関係なんですか!?』


「違うよ。私の彼氏も一緒」


『良かったぁ。で、どこにいるんですか?』


「大学の近くだけど……」


『え!嘘!私も近くにいるんです!』


「へえ……」


『これから部室で会いませんか!?』


「え……どうしよう」


『会いましょう!グアムの写真も見せたいし!』


「うん」


『じゃ、今から向かいます♪』


目黒さんは元気にそう言って電話を切った。


「ミチコは意外と押しに弱いな」


ハジメが言った。


「ごめん。せっかく久々にゆっくり会えたのに」


「いいよ。友達は大事だからな」


「終わったらまた来ますよ」

平田にはすでに仲間意識が芽生えているらしい。




軽快な足取りで平田は山を降りて行った。

心なしか、引き締まったように感じる。

山で鍛えられたのかもしれない。