「平田……」


「ははは。あれが平田だったとはな。平田のほうも、オレらとはちあわせてかなりびっくりしたみたいでさ……」


「その話はもうしないでくださいよ!」


「まあ、第一印象は最悪だったけど、話してみると意外に良い奴でね」


「そうでしょう」


「ん。そういえば、オマエのおふくろさん、心配してるんじゃないか」


「はっ!そうだった!」


「平田、携帯貸そうか」


「ぜひ貸してください!ママがすごく心配して警察に連絡してるかも!」



平田は携帯を受け取ると、より良い電波を求めて、おかしなポーズで小屋の外へ出ていった。


5分後。

しょんぼりした様子で平田は戻ってきた。


「どうだったの?」


私が言うと、平田は大きなため息をついた。


「ママは当直続き、パパは出張と学会で、僕がいなくなったことに気付いてなかったそうです」


「心配かけずに済んで良かったね」


平田はまた大きなため息をついた。


「ウルフさんはおうちの人に連絡しなくて良いの?」


「オレは一人暮らしだからな。それよりバイトを無断欠勤してるのがまずいな」


「ドムドムバーガーだっけ」


「そうだ。ん。なんでオマエが知ってるんだ!?」


「それは……あの……」


「そうか。そこまで調べていたとはな。オレを疑っていたのか」


「ごめんなさい」


「ふん。まあ、疑われてもしかたないような人生だったからな」


「あ!そういえば、橋本ミミさんが、ウルフさんのこと、超探してましたよ!」


「ああ……。ミミか……」


「付き合ってたんでしょ?」


「短い間だけどな……まあ、どうでも良い話だ」


「ミミさんに連絡してね」


「わかったよ。じゃあ、オレは、ドムドムに行くよ」


ウルフは上着を羽織ると、格好良くポーズを取って、小屋を出て行った。