「やあ。君たちには心配をかけたね」

沼袋部長が言う。


「本当ですよ」

目黒さんが、いやみっぽく言った。


「ははは。まいったなあ」


「で、ミミ助はどうだったんですか?」


「なんとか機嫌を直してもらったよ」


「僕が1万円あげたんです!」


平田が言った。


「わっ。良いな。あたいも欲しいな」


と、山嵐ノゾミが言うと、平田は、何やら照れながら財布を取り出した。


「5千円で良いですか?」


「やだ。本気にしないでよ。あはは」

山嵐ノゾミが言う。


意外に大人の対応だ。


「そんなんじゃなくて、あとでコンビニでお酒買ってきてよ。あは」


「はい!よろこんで」

平田はなぜか山嵐ノゾミに従順だった。

「ミミ助の野郎は、平田先輩の1万円で納得したんですか?やっぱり売女だから?」

目黒さんが言った。

声が震えている。


「目黒君、そんなこと言わないでくれ」


「で、でも」


「今回のことは僕が全面的に悪かったよ。怪我をして弱気になっていて、正常な判断ができなかったんだ」

「でも……」


「ミミ君が付いて行きたいと言ったときに、止めるべきだったんだ。自分を恥じるよ」


「まーまー。沼袋ちゃん、済んだことは気にしないで」

熱々のたこ焼きを皿に乗せながら、山嵐ノゾミは言った。



「今夜は飲もうじゃありませんか!」

平田が言う。


「そうですね。私、飲んじゃいます!」

目黒さんはそう言うと、すごい勢いで缶ビールを飲み干した。