病院の帰り道で私を襲った黒い服にフルフェイスの人物……

あれは誰なのだろう。

急にどつかれて、気付いた時にはナイフで刺されそうになっていたので、身長も体型も、あまりよく覚えていない。

そんな余裕は無かった。

ヘルメットから出ていた長い髪だけが印象的だ。


まさかハジメがこんなことをするはずが無いが、あれが絶対ハジメで無いと確信できたわけではなかった。

なんとなく、警察に行く気にならなかった。


もしハジメが犯人だったとしても、私が警察に行くのは嫌だ。

モトカレを警察に突き出すなんて、できない。


もやもやした嫌な気分だった。


ホームレスのひじきさんのひどい怪我を見て、気分が悪かったし、何もかもすっきりしなかった。


弟は、ホームレス狩りの犯人を見つけて絞めるなんて言って、正義感に燃えてしまっていたけれど、私はそんな気にはなれない。


川原で狩られたホームレスなんて、私には関係ないことだ。


自分が何をしたら良いのか、また、わからなくなってしまった。




悶々としながら、ソファで転がっていると、電話が鳴った。






犬のおまわりさんじゃない着信音は久しぶりだ。



液晶画面には、山嵐ノゾミの名前が表示されていた。