鼻血を出したホームレスだ。

40代くらいだろうか。


「ししゃもさん!どうしたんじゃ!」

婆が言う。


ししゃもさんと呼ばれたホームレスは、鼻を押さえながら言った。


「大変だぁ!ひじきさんがやられたぁ!」


「ひじきさんが!?どうしたんじゃ」


「とりあえず来てくれぇ!」

婆は素早く赤い頭巾を被り、私と弟に言った。


「おまえらも来るんじゃ」


「あ……はい」

何だかわからないが、私はとりあえず返事をした。



ししゃもさんに案内されたのは、山のふもと付近にある小さな川のほとりだった。


川原には、ブルーシートで作られたホームレスの家が点在している。



その中の一つに、ひじきさんがいるらしい。


ししゃもさんは、特に薄汚れたブルーシートの家に向かって一直線に進んだ。