話が盛り上がって、気付いた時にはもう5時になっていた。

真帆は吉川ヨシオの病室に戻り、目黒さんは倒れた平田の付き添いに行った。

私は一人で病院のロビーにいた。


窓から見える空は、いつの間にか暗くなっている。

まだ日が暮れるような時間ではないから、曇っているのだろう。



空を気にしながら上を向いてふらふら歩いていたら、病院のエントランスで、橋本ミミに会った。



「ミチコさん」

突然ミミに呼ばれて、驚いてしまった。


「わ。ミミさん」


「ミチコさん、こんにちは」

橋本ミミは、薄手のグレーのツインニットに、黒のロングスカートを合わせている。

腕には包帯が巻かれている。


「ミミさんも沼袋部長のお見舞い?」

私が尋ねると、ミミは目を見開いた。


「え!?沼袋さん、にゅ、入院したんですか」


「あれ。知らなかったの?」


「わ、私、聞いてません。病気ですか?」


「急だったからね。昨日襲われて怪我したの」


「嘘!そ、そんな」


「あれ。じゃあ、ミミさんは腕の傷の通院?」


「そ、そうです。腕の捻挫で……」


「腕、大丈夫?」


「そんなこてより、沼袋さん、病室はどこですか」


「4階の階段のすぐ横の部屋」


「わ、私もお見舞いしてきます」


ミミは、そう言うと、病院の中に駆け足で入って行った。


その直後、大粒の雨が降りだした。


このまま駅まで走ろうか、どこかで傘を買おうか迷っているうちに、土砂降りになってしまった。