病院に着ていく服は、水色のワンピースにした。

お葬式みたいな暗い色だと、元気が出ない。


化粧をして、簡単に髪をまとめると、私は病院へ向かった。



吉川ヨシオが入院しているのと同じ病院だ。


受け付けで名前を告げて、病室に向かう。

吉川ヨシオの時と違って、スムーズだ。


沼袋部長のいる部屋は個室だった。


ノックをして部屋に入ると、中には沼袋部長の両親らしき人がいた。


厳しそうなお父さんと、小柄で穏やかな雰囲気のお母さんだ。

二人とも、シンプルだが、しわ一つ無い上質な服を着ている。


時計はフランクミュラー、靴はぴかぴかだ。


私が挨拶をすると、二人は、これから昼食を食べに行くと言って、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


彼女か何かと勘違いされたのかもしれない。


沼袋部長は、意外に元気だった。


あちこち包帯だらけだが、命に別状は無いみたいだ。


「昨日は悪かったね」


沼袋部長が言う。


「いえ。全然……」


「救急車を呼ぼうとしたら、コールバックしちゃってね。ミチコ君で良かったよ」

「役に立てて良かったです」


「あばらにひびが入って、あとは擦り傷と……ひじは何針か縫ったみたいだ」


「重傷じゃないですか」


「痛み止めの点滴を入れているから、大丈夫だ」


意外とタフみたいだ。


「一体何があったんですか」


「いやあ。大変だったよ。突然襲われてね」

沼袋部長は話しはじめた。