なんとなく、携帯を取り出して、沼袋部長に電話をかけてみた。

今まで、あまりプライベートな用事で沼袋部長に電話をしたことがなかった。


先輩だし、ハンサムだから、かもしれない。


近寄りがたい雰囲気がまったく無いと言ったら嘘だ。


17回コール音を聞いて、私は通話終了ボタンを押した。


まだ山嵐ノゾミとおうちデートの最中なのかもしれない。



そんなことをしているうちに、すっかりドリアが冷めてしまった。


レンジで温めようと思ってドリアの皿を持って立ち上がった時、携帯に電話がかかってきた。


沼袋部長だ。



「もしもし」


勢い良く電話に出てみた。

沼袋部長は無言だ。

「沼袋部長、もしもし?」

電話の向こうから、うめき声のようなものが聞こえた。


「沼袋部長!どうしたの!?」


『こ……殺される……』


「へ!?」


『助けてくれ……』


「何!?どうしたの!?」


『ち……血が……』


「怪我してるんですか!?」


『おそ……われ…た……』


「襲われたんですか!?」


『お弁当屋さんの裏……』


「え?」


『大学の……』


「救急車とかは!?」


『呼んでくれ……』


「は、はい!」


『ダメだ……意識が……………』



沼袋部長は、気絶してしまったようだ。




私は電話を切ると、すぐに救急車に電話をかけた。


心臓がどきどきする。



大学のお弁当屋さんの裏で友達が血を流して倒れているらしいということを必死で伝えた。


通話終了ボタンを押したとき、自分の手が震えていることに気付いた。