「あ、あの……」

チーズケーキを食べながら橋本ミミが言った。


「ひ、平田さん、2千円ください」


「ほえ……ああ、素潜り競争のですか……。うーん、あのことは忘れたいなあ。トラウマになりましたよ」

苦しそうに平田は言った。

「平田くん、それはいけないよ」

沼袋部長が言う。


「そうですか?」


「ああ。だいたいミミ君にあんなことしてもらって、たったの2千円っていうのがまずおかしい」


「でも、ぼ、僕、ファーストキスだったんです」

顔を真っ赤にして平田が言った。


「こんな可愛い子とできて良かったじゃないか」


「確かにそうですけど」


「2万円払いたまえ」


「えー」

「本来なら7万円貰っても良いところだが、今回に限り特別価格の2万円だ」


「そ、それなら安いじゃないですか」

ミミが言う。


「確かにずいぶん安くなっていますねえ。よし、払いますよ」

平田が言う。


「平田くん、ファーストキスはどんな味だったの?」

真帆が言う。



「さくらんぼの味ですね」

舌なめずりをして平田が言った。


「キャ☆」

橋本ミミが赤面した。


爆笑が起る。



気付くと、目黒さんだけ全く笑っていない。