目黒さんには、彼氏がいるという話はしているが、彼氏が山賊だということは話していない。

だから、あまり山のことは話したくなかった。

でも、こんなに熱心にウルフを探している目黒さんに、黙っていることはできない。

『先輩、どうして山になんて登ったんですか』


当然のように、目黒さんはそう聞いてきた。


「健康のために山登りしてたの……」

私は、そう答えるしかなかった。

「あとね、ハムスターみつけた」


『え?ハムスターがどうかしたんですか』


「あれ、平田君から聞いてない?」


『聞いてません…よう』


「山の近くでハムスターを盗まれたっていうから、私、探して取り戻してきたの」


『そう……ですか』

しゅんとした声で目黒さんは言った。


『私……平田先輩から何も聞いてません。なんででしょう』


「あの、ほら、私、平田君と仲良いしね!」


『ミチコ先輩と平田先輩、本当仲良いですよね』


「そんなことより、ウルフのことだよ!」

慌てて話題を元に戻した。


私は目黒さんに、ウルフ中川とすれ違った時の様子を詳しく話した。


『一度みんなで山に捜索に行ったほうが良さそうですね』

目黒さんが言った。


それはどうしても避けたい。

「っていうか、私の彼があの山には詳しいから相談してみるよ!」

慌てて私は言った。


『それは頼もしいですね!』


「うん!任せて!何かわかったら連絡するね!」

そう言って、私は電話を切った。



ハジメにウルフのことを尋ねる気はまったく無い。


目黒さんには適当に言ってごまかしておくつもりだ。





もう、山にも行きたくないし、ハジメにも会いたくない。