山賊眼鏡餅。

「え!?」

相手はひどく驚いたようにそう言った。



帽子を深く被っていて、顔がよく見えないが、それはハジメではなかった。

グレーのTシャツからよく焼けた肌がのぞいている。

ハジメは黒以外の服を着ない。

それに色白だ。



「ごめんなさい。人違い……」

私がそう言い切らないうちに、男はすごい勢いで走りだした。


帽子がずれて一瞬、男の顔が見える。



「嘘でしょ……!?」


見覚えのあるその顔は、ウルフ中川のものだった。


「ウルフ中川さん!」

私が呼び掛けると、ウルフは帽子を押さえて、逃げるように走り去った。


慌てて私は後を追った。


しかし、あまりにもウルフが素早いので、3歩進んだところで、追うのは諦めることにした。

とても追い付けそうにない。

ウルフ中川は、運動神経が良いことで有名だった。





それにしても、なぜこんなところにウルフがいるのだろうか。


茂みの中から出てきたということは、ハジメと何か関係があるのかもしれない。




私は、近くに落ちていた木の枝を掴み、茂みの奥へ入っていった。