山賊眼鏡餅。

朝になって、キッチンへ行くと、弟がブリーフにエプロンという出で立ちでパンケーキを焼いていた。




「あれ、アネキ、顔どうしたの?」


「ちょっとね。あなたこそどうしたのよ。朝からその服装」


「夜食。腹減っちゃって」


「相変わらず昼夜逆転生活だね」


「チューヤン?」


「なんでもない」


弟は、私の分のパンケーキも焼いてくれた。

少しアホだが、姉想いの良い弟だ。



「昨日、ハムスターが盗まれたんだよねえ」

パンケーキを食べながら、私は弟にハムスター泥棒の話をした。


代わりのハムスターをペットショップで買うと言った途端、弟の顔色が変わった。


「なんだよそれ!ふざけんな!」


「平田が責任持って買ってくるんだって」


「ハムちゃんに代わりなんていない!」


「同じようなハムスター探すらしいよ」


「は!?ふざけんな」


「ふざけてないよ」


「まじ頭おかしいよ!ハムちゃんは世界に1匹しかいねーんだよ!代わりなんてどこにもいねーよ!」


はっとした。


ハムスターは世の中にたくさんいるけれど、ハム研のハムちゃんは世界に1匹だけだ。


「アネキの彼氏がハムスター泥棒に関わっている可能性があるんだったら、会って話せば良いじゃねーか」


「今、ケンカ中っていうか、もう別れたかも」


「そんな甘ったれたこと言ってたら、ハムちゃんは取り戻せないぜ」


「詳しくは言えないけど、ちょっと気まずいことになってて……」


「それがなんだ!一度は愛しあった二人だろ!」


「う……うん」


「オレが今から送ってってやるから、彼氏と話してこいよ!」


「うん……」


いつになく熱くなった弟に流されて、私は、山へ行くことになってしまった。