山賊眼鏡餅。

「逃げたの?」


『違います。盗まれました』


「誰に?」


『泥棒です。人のものを取るのは泥棒に決まってます』


「どこで盗まれたの?」


『大学の帰り道です』


「どんな泥棒だったの?」


『暗くてわかりませんよ。服装も黒っぽくて……』


「男?」


『わかりません』


「どんな状況で盗まれたの?」


『道を歩いていたら突然ハムスターの籠を開けられて、中身のハムちゃんだけを奪われました……。あっという間でした』


「取り返せなかったの?」


『僕、追い掛けたんですが、速くて追い付けなくて……。大きな籠を持っていて走りにくかったし……。気付いた時には山に逃げ込まれてしまって、手も足も出せませんでした』


「山に?」


『そうです。大学の裏山です』

大学の裏山……ハジメのいる山だ。



山に消えたハムスター泥棒。

ハジメと何か関係があるかもしれない。


『もしもし!ミチコさん』


「あ。ごめんごめん」

ハジメのことを考えて平田の話を聞いていなかった。


『とりあえず、明日ペットショップで代わりのハムスターを買ってくることにしますね』


「あ。うんうん。それ良いね」


『それが、僕にできる唯一の償いですから』


何の話かよく理解できなかったが、平田は演技めいた抑揚をつけてそう言うと電話を切った。