「ブランド物の財布、欲しがってたよね。ほら、これ」

ハジメはポケットから、さっき少年から奪ったヴィトンの財布を出した。

財布には血が付いていた。


「これ、ミチコにあげるよ」


「そんなの……」


「え?」


「そんなのいらない!」

自分でも驚くくらい大きな声が出た。


「ミチコ……」


「そんな血の付いたお財布なんていらない!今、ハジメのこと嫌いになった!」



思ってもみなかった台詞が自分の口から出た。

ハジメは悲しそうな顔をして私を見ていた。




私は、そのまま、走って山を降りた。





ハジメは追い掛けてこなかった。







いつも優しいハジメが、私の見ていない所では平気で中高生を蹴飛ばす鬼畜だったなんて……。





もう、何を信じて良いのかわからなかった。