「ミチコ、ほら、こいつは悪い奴だよ」


「そんな……でも……」


「でもね、おかしいんだよね。カップル狩りをしてたはずなのに3千円しか持ってない。なあ、どうしたのかな?盗ったお金は」



ハジメは、少年の頭を足で地面に強く押しつけた。



「ぼぼボスにぃ、わ…渡しましたぁ。うえーん」

苦しそうに少年が言う。


「ボボボス?何者だ?」



少年は答えなかった。



気を失ってしまったようだ。




「なんだ。仕方ないなあ」

ハジメはそう言うと、少年を担ぎあげた。


「どこに連れて行くの!?」


「山のふもとまで降ろしておくんだよ」


「なんで?」


「親切心から」


ハジメはそう言うと、茂みの中に消えていった。

それから5分もしないうちに、戻ってきた。


「早くない?」


「途中から転がしたからね」


「ひどくない?」


「ひどくない」




私の目から、知らないうちに、涙があふれ出ていた。