「結子は今日は郁奈と帰るの?」



「はい。買い物に行く約束してるんです」



笑って話す結子を見てると、やっぱり可愛いなって思う。


でも大翔の前で笑う結子はもっと可愛い。


俺にはあんな笑顔見せてくれないし。


やっぱ大翔には敵わないってことか。



「ありがとな、結子。大翔は教室?」



「はい。さっき先輩たちの教室に行ったらいたので」



そう言って結子はまた笑顔を見せる。


廊下がどんなに賑やかだって、どんなにたくさんの人がいたって、結子だけが特別に見える。



「じゃあ、私行きますね!さよなら、先輩!」



俺に小さく手を振って、結子は走って行ってしまった。


“さよなら”か…。


なんか、突き放されたみたいで心が痛い。


俺、かっこわりぃ…。


なんだよ心が痛いって。


未練たらたらじゃん。


なんで告れなんて言ったんだよ。


自分の中で後悔ばかりしてたって何も変わりはしないのに…。


自分でそう思えるってことは、まだ俺は冷静なんだろう。