こんなにも、俺のことを想ってくれてるのに、俺は気持ちに応えることも出来ずに、ただこの子の気持ちを利用して、自分勝手な言い分を…期待させるようなことを言って……。
逃げ道を作っただけだ。
喉が熱くなる。
空気の冷たさに負けないくらい、熱が集中していく。
熱い……。
苦しい……。
心が醜さに支配されていく。
黒い絵の具で真っ白な紙を真っ黒に塗り潰していくような感覚が俺を襲うんだ。
頬を伝ったのが涙だって気付くまでに、どれくらいかかっただろうか。
ひとつ、またひとつと零れてく。
真っ白な景色がぼやけてくんだ。
俺はどうしたらいいんだろう……。
「先輩……」
俺が泣いてることに気付いた郁奈が、そっと俺を包んだ。
郁奈の腕は温かく、優しい匂いがした。
俺よりも背の低い郁奈は背伸びをして、一生懸命俺を抱きしめてくれてる。
なんでこの子を好きにならなかったんだろう……?
この子を好きになれればどれだけよかっただろう。
そんなことを思った。


