首を左右に振る僕に、
心美ちゃんは優しく微笑んだ。
「先帰ってもいいのに……」
彼女は再び視線を下に戻し、
滑らかにボールぺンを動かした。
「でも…僕も日直だし…」
「もうすぐ書き終わるから…ごめんね。」
僕の言葉を遮り、
心美ちゃんは柔らかい声で
そう言う。
それから、
僕たちの間には会話がなくて。
沈黙の時間だけが流れていた…
僕は
彼女の前の席の椅子に座っており
廊下側のこの席から
窓の外の景色を眺める。
一面、薄いブルーの世界。
宇宙に吸い込まれそうな月
とは違って全てが
透き通っているような、
そんな感覚。
“いいな、この世界”
それからすぐに
カチャ……………
ボールペンの芯をしまう音がして
「…………終わった…」
心美ちゃんの
低い声が聞こえたんだ。


