「ごめんなさい…」

私はゆっくり頭を下げる。

「渚が謝ることじゃないさ」

お父さんがゆっくりと口を開き、しみじみとした空気が流れた。

大きな窓から差し込む夕日がまぶしくて、目を細めたお父さんの顔は、今まで見た中で一番の輝きを放っていた気がする。

つられて微笑んだ私を見て、お兄ちゃんがポツリとつぶやいた。

「忘れてたな…。
渚の笑顔」

「そうだな。
母さんを亡くして、落ち込んだ私達を励ましてくれたのが、渚の笑顔だったのにな…」

遠い目をして、天井を見上げたお父さんの目には幼き日の私の笑顔が映っているに違いない。