「いいですよ、行きますよ。こんな所で一人で待ってるなんてお断りです」

4人は車を降りて道路と反対側に向かって歩き出した。

「降りそうだな・・・傘車に中に置いてきちゃったよ」

雅彦はなんとか自然を装って碧の横にきた。和哉は先を行くのに集中して静香となにやら世間話をしている。

「碧ちゃん体、大丈夫?荷物持とうか」

「うん大丈夫。ありがとうね」

「碧ちゃんが休んでいる間、何回か携帯に電話したけど、なんだか調子悪いみたいだったからさ…体調悪いのかと思ったよ」

「うん、心配かけてごめんなさい、少し疲れてたから」

雅彦の目がまともに見られない。自分の横顔に降りかかる視線が痛くて碧はますます下を向いた。

「碧ちゃん…なんだか雰囲気変ったね」

「えっ、そうですか?私はいつもと一緒ですよ」

わざとおどけたような声をだして作り笑いを浮かべる。
雅彦との距離は僅か1メートル程でも永遠にも思える距離と高い壁があるような気がして碧は申し訳なかった。

「碧ちゃん…好きな人でも出来ちゃった?」

思い切って雅彦は口に出した。
この言葉を言ってしまえば、もう碧が帰ってくるかもという切ない希望を持たなくても済む。昨夜殆ど寝ないで雅彦が出した結論であった。

本当は自分から切り出さなくてはならない話を逆に雅彦にされた事に碧は深い自責の念を感じながら俯いた。見る見るうちに両目に涙が溢れる。

思えばずっと自分を好きだと言ってくれて優しくしてくれた雅彦に自分はいったい何をしてあげれたのか…。結局は思わせぶりな態度で傷つけてしまったのではないのか。

「み、碧ちゃんどうしたの?泣かないでよ、沖田に見られたら殺されちゃうよ」

碧の涙が全ての答えだった。

雅彦には碧が自分のために涙を流してくれた事だけで十分で逆に碧をそこまで追い込んでしまった事に心を痛めた。