(いったい碧ちゃん、どうしちゃったんだろう…まさか沖田の奴と…)

実際二人が血の繋がっていない赤の他人だという事は雅彦もよく知っている。そんな雅彦を哀れに思ってか静香が話し相手になりながら、場を和ませていた。

「碧、これ美味いぞ、食べてみろ」

「うん、有難うお兄ちゃん…本当!美味しい」

「み、碧、ワイン全部飲んじゃったんだけど、もう1本頼む?」

二人の世界に入りそうな碧達とさらに落ち込む雅彦を見て静香が慌てて話しを区切った。

(もう碧ったら…雅彦さんの事少しは気遣いなさいよ)

「そうね、どうするお兄ちゃん」

「いいよ、明日は土曜で学校休みだし、碧も休みだろ?」

「碧も休みってことは私も休みなんですけどね、私の事も心配してくださいよ」

静香が笑いながらホール係を呼んだ。ますます面白くない雅彦はグラスに残っていた赤い液体を一気にあおる。

「おい金沢大丈夫か?お前あんまり酒強くないだろ」

「…大丈夫だよ。気にしないで続けてくれよ」

そんな二人を見て静香が慌てて間に入る。先ほどからそんな事をもう何度も続けていた。
一方当事者の碧はそんな空気にまったく気が付かず和哉にべったりである。

まだ返事はしていなかったが和哉に愛を告白されて2日後の昨夜ダイヤの指輪を受け取っていた。
それを渡しながら和哉は正式に婚約してほしいと告げ、肇達の了解はもうとってあると碧に言った。

少し驚いた碧だが頬を紅潮させながらそのリングを左手薬指にはめ灯りに照らしてみた。

その複雑なカットから繰り出される神秘的な輝きは碧にこの上ない幸福感を感じさせ、返事はじっくり考えてからでいいと部屋を出て行った和哉に逆に物足りなさを感じたりもした。