涙は止まったものの未だ鳴咽が止まらない碧はしゃくり上げながら和哉に聞いた。

『ねえ本当に買ってくれる?約束だよ?』

『もちろんだよ。碧の欲しい物は何だって買ってやるから。だから心配するな、お前には俺がついてる』

『うん…』

誰も行き来しない夜の路上で和哉に抱かれたまま碧は子供のように何時までも泣き続けた。

どれぐらい時間が経ったのだろうか。
泣き疲れた碧がふと顔に妙な生暖かさを感じて目を開けると、僅か数センチの所に和哉の顔が迫っていた。

鼻と鼻が今にも触れそうな距離である。

反射的に碧は両手を突き出し和哉の腕の中から出ていた。

『どうしたんだ碧?』

『…ゴメン何でもないの。帰ろう、お兄ちゃん』

心なしか和哉の顔にユウウツそうな色が広がる。
自分でもどうしてなのか分からない内に碧は和哉の顔がまともに見れなくなっていた。

破れた胸元を手で押さえながら歩く碧と和哉。

血の繋がってない25才と27才の兄妹は街灯に照らされた闇夜を若干の距離を開けて物も言わず黙り込んで歩いていた。