しかも教団への多額の寄附行為、高価な神札の購入で僅かな蓄えも底をつきつつある。

『言いたい人には言わせておけば良いんですよ。この神様は何でも願いを聞いてくれるんですからね…人だって殺せるんですよ』

(そんな訳ないだろ…)

心の中で思いながらも口には出さない。

これ程のめり込んでいる美津子にはもう何を言っても無駄だった。

もともと無宗教でキリスト教もイスラム教も分からない健吾だが、美津子のやっている行為がおかしい事ぐらいは分かる。

あんな物で娘の沙耶が治るとは到底思えない。

しかし健吾は毎日の生活に疲れ切っていた。
仕事に疲れ美津子との確執に疲れ、そして娘の病気…全てを投げ出し逃げたい気分になる。

美津子の奇妙な儀式を目の当たりにしながら健吾はもうどうでもよくなっていた。