アイドルのような女性が裏ではガサツで横柄な態度を取っている話はよくあるが、静香は誰も居ない所でも一人フロアの掃除をしたり碧が上司の悪口を言ったりするのを諌めたりと、同年齢でありながら碧は静香のような女性になりたいと思っていた。

『でも本当にどうしたの?元気ないよ』

『それが最近変な夢ばっかりでさ…うなされっぱなし』

『また例の鬼が出てくる夢?』

静香には包み隠さず何でも話せる。

『うん、今朝も汗びっしょり』

『もしかして何か思い出すんじゃないの?きっと変な夢もそれの兆候よ』

現在碧の過去を知っているのは家族や関係者を除いて静香と雅彦だけである。

『そうかな…でも考えると頭痛くってさあ』

顔をしかめながらオフィスの回転ドアに入った碧達はエレベーターから出て来た初老の紳士に気付き立ち止まった。

『社長おはようございます』

『ああ、おはよう。確か総務の紺野君と沖田君だね』

『はい、社長お出かけですか?』

社長が自分達の名前を覚えていてくれた事に幾分感激しながら碧は頭を下げた。

役員数人を従えて車に乗り込む後ろ姿を見送りながらエレベーターの扉を閉じた二人は申し合わせたようにコンパクトを取り出しメイクの確認をした。