180以上はある大男で日に焼けた浅黒い肌に粗削りな彫刻の様な横顔は蓬莱学園の人気を和哉と二分していた。

碧の鼓動が少し早まったのには訳がある。

最近碧は雅彦と一緒に映画を見たり食事を共にしたりする機会が多いからで、未だ未だ恋人同士という訳ではないが、只の友人からは少し外れた所にいるのも事実だった。

雅彦の事を好きなのかと尋ねられれば好きと答えられるが、愛してるいるかと聞かれれば碧にもよく分からない。

蓬莱学園と碧の勤める証券会社との別れ道にある近代的なサウスセンターホテルの前に差し掛かった3人は二言三言会話して、それぞれの道へ向かった。

別れ際、雅彦が和哉に気付かれぬよう碧にウインクする。
慌てて碧も返そうとしたが失敗して両目をつぶってしまった。

別に和哉に隠している訳でもないが、未だ正式に付き合っているのでもないし、別に良いかな…と碧は自分を正当化した。

大学生の時に交際していた男友達と一緒にホテルに入ろうとするのを和哉に見られて酷く怒られた事がある。

未だ早いと言われ20歳を過ぎて何が早いのかと初めて和哉に反発した日の事を碧は思い出した。