銃口がまっすぐ向いているのも気にせず、碧は静香ににじりよった。
その圧力に静香も同じだけ後退りする。

「それは…気が変ったからよ。楽に死んでほしくないし、あんたが思い出さないんなら殺さなくてもいいじゃない。碧なんかの為に殺人者になるのも馬鹿らしいし」

「炎の中で私もう駄目だと思った…でも静香が励ましてくれた。それに…それに私が死ななくてよかったって静香泣いてくれたじゃない?私…私、やっぱり静香が好きよ。静香が大好き」

最期の方は涙で言葉にならない。

静香と知り合ってからの3年間友達の少ない碧にとって静香は文字通り生活の一部だった。

「ずっとずっと静香は私の宝物だったわ…これからも静香のいない生活なんて考えられない」

碧の言葉に静香の銃口が僅かに下がった。

「わ…私はゴメンだわ。私は碧のいない生活を望む。今だって助けた事後悔してるし…」

口ではそういいながらも心境の変化を表すように銃口がぶるぶると震え額から汗が噴出す。

「紺野さん…碧を許してくれないか?碧は川村沙耶じゃないんだよ。私の大切な娘だ。紺野さんも私には恨みはないだろ?だったら私達から娘を奪わないでくれ、娘を許してやってくれ」

「私からもお願いよ紺野さん。川村沙耶の両親があなたの人生を変えてしまったんなら沖田碧の親として何でも償いはするわ…だからこの子を許してやって…」

二人から哀願された静香は足首まで水につかるほど後退した。

「やめてよ二人とも…どうして私に頼みごとなんかするの?私は碧を何回も殺そうとしたのよ」