ケイカ -桂花-

ケイの言葉通りだった。

数分後、最初の1人が来た後は、次々とお客さんが現れた。

次々といっても一度にではなく、なぜか決められたように前の客が終わる頃に次の客が入ってくる。

「ハナ、ピン2本」

「ハナ、ここ押さえてて」

指示されたことをこなしながら、いろいろな事に納得がいった。

ケイの美容院は普通の美容院とはちょっと違った。

カットやパーマはしない。

キャバ嬢やクラブのお姉さんが出勤前に来る、セット専門の美容院だった。

だからこの時間、この場所。

お客さんの注文に合わせて、服装を聞いて、気分を察知して、淡々と髪を作っていく。

グチに相づちを打ちながら、手は無駄なく動き、寝ぐせのついた髪をあっという間に華やかに変える。

魔法のようだ。

その魔法は、お客さん自身にも確実にかかる。

入って来た時とは顔つきも違うが、全身からオーラが出る。

ただの女が、プロの女になる。