ケイカ -桂花-

「ママ、なんて?」

「ふふっ、気になる?」

口から漏れた白い煙が夜の闇に吸い込まれていく。

「別に・・・」

私の口からも同じ様に流れ出る煙。

「世間話、っていうの?天気の話から始まって、どこそこの何がおいしいだとか、新しく出来たアウトレットとか、あとなんだっけ?忘れちゃった」

手に持った携帯灰皿にぎゅっと押し付けて消し、それを私に渡した。

私のタバコはまだ残っていたけれど、同じ様に消して返した。

「でさ、さりげなーくセイちゃんとの事、デートの様子とか聞いてくんの。それがさ、ほんと上手くて、私ぺらぺらしゃべっちゃんだよね。ほとんどノロケ話」

「バカじゃん」

私のツッコミに愛人はケラケラ笑った。