ケイカ -桂花-

「電子レンジ置いてよ」と文句を言いながら、冷たいお弁当を向かい合って食べた。

「ごちそうさま。おいしかったー」

ケイの弾んだ声が店内に響いた。

前も思ったが、ケイの食生活はどうなってるんだろう。

こんなのたいしておいしくもないのに、お米一粒残さずたいらげて。

「お礼にさ、ちょっとそこ座って」

鏡の前のチェアーを指差した。

「お礼って、弁当ぐらい別に・・・」

口ではそう言いながら、体は素直にチェアーに向かった。

少しわくわくしていた。

今まで目の前で華やかに変身させる、鮮やかな手さばきを見てきた。

ちょっといいなーって思ってたんだ。

ああいうゴージャスなの自分じゃ絶対出来ないし。

だけど、簡単なシャンプーを終えてケイが準備し始めたのは、つけ毛でもピンでもなく、ハサミだった。

「もしかして、切るの?」

「そうよ。イヤ?」

「イヤじゃないけど・・・」