ケイカ -桂花-

多分、数秒後、私には止まってるみたいな時間の後、その人の鋭い目がフッと和らぎ、口角が僅かに上がった。

笑った?

その瞬間、金縛りから解けたみたいに急に体が動き出し、気がついたら私は外に出ていた。


外の空気を吸っても、変な余韻が体に残っていた。

なんだよ、あいつ。

愛人のくせに。

自分の立場分かってんのかよ?

オヤジはあいつのどこが良かったんだよ。

変な服着てるし、変な靴だし。

ブスだし。

バカそうだし。

そうだよ、大体あんなオヤジの愛人なんだから、絶対頭悪いんだ。

2人揃ってバカ。

歩きながら思いつく限りの悪口を並べた。