ケイカ -桂花-

私の問いには答えず、苦しそうな顔で言った。

「世の中には、女の子を幸せに出来る人と、出来ない人がいる。彼は出来ない人」

だからやめなさい、ケイの目がそう言っていた。

先生や親が、あの子とは遊んじゃいけません、と言っているのと同じ目で。

ケイの言っている事が分からない。

「なんなのそれ?
・・・じゃ、じゃあ、オヤジはっ?オヤジも出来ない人だろ?結婚してるのにケイともつきあってて。どっちも幸せにしてないし」

ちょっと言いすぎたかも。

でも、そうだもん。

「セイちゃんは出来る人よ。同時に2人の女を幸せに出来る人」

ケイの顔は暗闇の中で、力強く光って見えた。

「なんかずるい。オヤジだけ・・自分だけ・・・」

「本当よ。ハナのママに聞いてみたらいい。幸せだって絶対言うから」

・・・なんなの?なんでそんなに自信たっぷりで言い切れるの?

分からない、分からないよっ。

「もういいよっ」

私は逃げるように走って家に入り、バタンッとドアを閉めた。