ケイカ -桂花-

「ハナ。今のハナの方がずっとミジメだよ。ハナのやってる事は、自分を守る事になってない」

ケイの目は強くて、同時にうんと優しかった。

「だって、・・泣くのは怖いよ。リアルになり過ぎて、多分、耐えられない」

のどで詰まってた物が、少しだけこぼれ落ちた。

「うん。自分の気持ちを真っ直ぐに見るのって楽じゃない。だけど、そこから目を逸らしちゃダメ。ミジメなんかじゃないよ、絶対に」

心の奥の固くなりかけた部分が、再び柔らかさを取り戻していく。

「悲しい時は思いっきり悲しんで、思いっきり傷ついて、余計な事は考えないでいい。その時の気持ちを大事にしてあげるの。
自分の気持ちを大事にする事だけが、自分を守ってくれる。
なぐさめたり立ち直ったりするのは、その後よ。そういう手順を踏む必要がある」

ケイの言葉が心の奥に染みこんでいった。

そしてそれは心を完全に柔らかくして、赤ちゃんに戻った心から産声を上げ始める。

両目から涙が流れ落ちた。

涙が唇に触れると、叫ぶ様な泣き声が自然と出た。

生まれたての赤ちゃんが火が付いた様に泣いているみたいに、私は泣いた。

呼吸が苦しくて、のどが痛い。

そして、心はもっともっと苦しくて痛かった。

だけど私は泣き叫び続けた。

何も考えず、ただ、泣いた。