ケイが手にしてる黒地に黄色っぽいロゴの缶は、ここで何度も見た紅茶の缶だ。

やったー、お茶タイム。

髪を結うのと同様に優雅なケイの手さばきに見とれていると、たちまち狭い店内は紅茶の匂いでいっぱいになる。

ちゃんとした手順で丁寧に入れた紅茶が、こんなに香り高くてこんなに黄金に輝く物だなんてここで初めて知った。

おいしい紅茶は一度に何杯も飲めてしまう事も。

茶葉を蒸らす数分間さえも待ち遠しい。

そして、それと同じくらいおしゃべりも。

「アールグレイ ウーロンってやつ。ウーロンの葉にベルガモットのフレイバーよ」

柑橘系のいい匂いと舌に残るお茶の甘み、うん、おいしい。

「つきあうことにしたんだ」

いきなり切り出した。

「この前言ってた子?」

「そう、宮崎」

「そうなんだ、おめでとう」

祝福の笑顔がくすぐったい。