桂木所長はそう言い、大の大人のくせに顔を赤らめてもじもじしている。

私はすっかり呆れてものがいえない。
不審者を見るような視線で様子をうかがっていた。


すると、そんな私の視線などお構いなしに私の手を取り、自分のほうに引き寄せる。

「早百合ちゃん…」

私の顎をつかみ、上を向かせる。

切れ長の目の奥の瞳に、私の顔が映る。

―――そらせない…



「所長!桂木所長、サンプルの様子が…」

すると勢いよく扉が開き、白衣を着た若い男性がノックもせずに所長室に入ってきた。

しかし、桂木所長は全く動じず私の唇を狙ってくる。


「……嫌あぁぁぁぁぁあっ!!!」

私は桂木所長を突き飛ばし、その場にうずくまって顔を隠した。

なんてところを見られちゃったの!私!