「懲りないやつだなぁ。次は海外にでも行きたいわけ?」


―――どういうこと?

私にはその言葉の意味が分からなかった。

長澤もしばらくぼんやりとしていたが、なにかに気づいたように目を見開いた。


「な…。桂木、お前……!」

どもる長澤に、桂木所長は気にせず続けた。



「なんで一応営業成績がよかったお前が、いきなり札幌に異動したと思う?」

その問いに長澤は答えなかった。
いや、答えたくなかったんじゃないだろうか。

そんな彼の様子を見て、桂木所長は静かに正解を告げる。



「俺だよ。上に打診したんだ。従わないなら俺が会社を辞めるって言ったら簡単に従ってくれたよ」

静かな室内にその言葉だけがこだまする。

私は、自分の耳を疑った。