私は、目を見開いて長澤を見つめる。
長沢の表情は変わらず、新しい獲物を見つけたハイエナのような、不気味な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「早百合、営業部じゃなくなってたんだってなぁ。噂で聞いたよ。残念だな」
その言葉に私は身構え、睨みつけるように長沢を見つめた。
「そんな構えるなよ。俺、札幌から戻ったばっかで寂しいんだ。また遊ぼうぜ、な?」
よくも平気でそんなことが言えるもんだ。
私は、怒りを抑えて話し始めた。
「もう長澤さんに関わるつもりはないので、他の人にあたってください」
そう言い終わるのと同時に、長澤は声を出して笑い出した。
「俺にシカト食らってたときは毎日おどおどした顔してたのになぁ!今の言葉、後悔するなよ」
彼は、脅しのような捨て台詞を残すとお目当ての資料を抱えて資料室をあとにした。
―――私はしばらくその場を動くことができなかった。

