「送っていただいてありがとうございました。おやすみなさい」

私はそう伝え、車から降りようとドアに手をかけたら、空いている方の手を掴まれた。

そのまま引っ張られ、桂木所長に抱きしめられる格好になっている。


「…早百合」

耳元で、低い声が私の名前を呼ぶ。

その声は、車内で切なく響く。

桂木所長の熱が、触れたところから伝わってきてたまらない。

「好きだ……」

胸の奥が、締め付けられるような感覚。

こんな感覚前にもあった。
私、桂木所長のこと…?

……待って。
この人は私に誠実に向き合ってくれている。
それなのに、私は?

「―――所長。もう少し待ってください」