指導者シライアスは、風に金色の長髪をなびかせ、透き通るような瑠璃色の瞳で、高台から星を見ていた。

「シライアス様」

 シライアスに声をかけてきた、一人の若者がいた。

 彼の名はルーイ。シライアスの一番弟子であり、年齢が近いこともあって、義兄弟の杯を交わした仲である。

「また、こちらにいらしていたのですね」

 ルーイは、茶色の瞳で、シライアスを見た。ルーイの目には、シライアスが大きく映る。

「…気になるんだ」

 シライアスは、ルーイの顔を見た。大きな瞳に、自分の姿が映っているのがわかる。

「え?何がですか?」

「あの、黒い星だ」

 シライアスが指さした方向には、夕焼けを壊すかのように、黒い大きな星が浮かんでいた。

「…サバミラ星、ですか」

「ルーイは何も思わないか?」

「何かって…何を、ですか?」

 シライアスは、一瞬、視線をルーイから離した。

「何かがあるような気がして、ならないのだ。あの黒い星には」

「何か…」

「ひょっとすると、何かを企んでいるのかもしれぬ。注意していた方がよかろう」

「私には、そうは思えませんけどね」

 ルーイは、シライアスの横に並んだ。

「私は、シライアス様のように、目が良くないので、サバミラ星の様子までは見えません。それに、今までだって、不穏な動きがあったように見えましたけれど、結局はシライアス様の思い過ごしだったじゃないですか」

「ああ、そんな事もあったな…」

 ルーイに痛い所を突かれて、シライアスは、苦笑いをした。

「大丈夫ですよ。あの星の者たちは、何かに寄生しないと動けないんですから」

 ルーイはそう言って、自分の髪の毛に触れた。くるくると巻いている栗色の髪の毛は、夕焼けの光に照らされて、赤く染まって見える。

「だが、この夕焼けが、明日も見られる補償は、どこにもない」

 シライアスは、金の髪をかき上げた。それが、ルーイの目の前で、光る糸のように流れ落ちる。ルーイは、その美しさに、一瞬魅了された。