「ところで、のぽがいた雲の上は、どんな世界だったの?」

 アリサが、のぽに聞きました。

「くものうえ?」

 のぽが不思議そうな表情をして、そう言いました。そういえば、アリサには話したことがなかったのです。

「くものうえはね〜、…えっと〜…」

 悩んでいるのぽ。生まれて間もない頃に地上に落ちてきたので、雲の上で過ごした記憶があまりないのです。

「うん、みんな、なかよしだった!」

 のぽは、笑顔でそう言いました。

「あらそうとか、にくむとか、そういうのなかったよ。みんな、えがおで、なかよしで、じぶんのやくわりをはたしてたの」

 ニコニコしながらそう言うのぽを、アリサはうらやましく思いました。

「そっか。みんな、仲良しだったんだね」

「うん、みんな、なかよしだったよ」

 どうやら、雲の妖精たちの間には、「争い」ということはないようです。

「うまれたときから、じぶんのやることがきまってるんだ。だから、やることをきちんとやるの。そうじゃないと、みんながこまるし、ちじょうのいきものもこまるから」

 なるほどね…そう、アリサは思いました。

「もちろん、ほかのなかまのやることも、きちんとみるんだよ。しごとをちゃんとやってるかとか、トラブルがないかとか」

「じゃ、例えば、誰かが体調が悪くて、仕事が止まってたら?」

「そのときは、ほかのなかまがたすけるの。たすけあって、はたらくの」

 アリサは、のぽの話を聞いていて、「もし、人間も助け合っていけたら…」と思いました。

「だから、のぽ、わかんないの。なんで、にくまないといけないの?」

 アリサは、すぐに答えることができませんでした。