『おぬしは、ルーイを最後の“勇者”として、他の星へと送った。だが、ルーイはまだまだ半人前じゃ。能力は十分備わっているが、優しすぎる。その優しさ故に、自らを滅ぼすとも限らぬ』

 ターレスの幻は、そう言いながら、顎鬚に手を当てた。

(それは…同感です。が、こんな姿になった私には、ルーイを導くことができない…)

『諦めるのは、まだ早い。その姿であれば、サバミラ星の者のように、“寄生”することも可能じゃ』

(寄生!?冗談はおやめください!)

『いや、冗談ではない。…もし、ルーイがたどり着いた先に、死んだ赤ん坊がいるならば、その体に宿り、その星の者として成長することができる。ルーイも赤ん坊の姿で、どこかの星に向かった。ならば、おぬしも、ルーイと共に成長するがよい』

 シライアスは考えた。確かに、ターレスの言う通りだ。この姿である以上、パドゥー星にこだわる必要は、もはやない。

『パドゥー星は、既にこの地に無し。おぬしが星のことを心配する必要は、もはやあるまい。ルーイと共に成長し、共にその星を守れ。それが、おぬしに課せられた、新たな使命じゃ』


 ターレスが杖を大きく振ると、シライアスの魂は、光のようになって、ルーイのゆりかごを追いかけた。

『シライアスもルーイも、儂が知らぬ力を秘めておる。たどり着いた星で“聖女”と出会い、秘められた真の力を知ることとなろう。…儂も、あの2人の手助けをするとしようかの』

 ターレスの幻は、大きな光を放った。その光と、パドゥー星のかけらがひとつになり、何かの形を取った。

『さあ、行くのじゃ、勇者の元へ!』

 光は、弧を描いて、シライアスの後を追いかけるように、宇宙の彼方へ消えた。