常に欲望と葛藤しながら夏実との生活を送っていた。 「夢の新婚ごっこはこれで終わりだな」 そう言い、夏実を離した。 夏実も頷いた。 今までにはない、強い眼で仁志を見つめた。 本当の夏実はいつもこんな眼をしていた。 仁志は涙が出そうになり、慌てて目を剃らした。 寂しくもあり、嬉しくもあり、いとおしかった。 「仁志、今まで本当にありがとう。この恩は決して忘れない」 「分かってる」