彼女の嘘と俺の嘘



『どう?ひいたでしょ?』

 サキの尋ね方には柔らかい棘が仕組まれている。

 たとえどんな返事をされても耐えてみせるという強がりを感じた。


シバ> いや全然。告白してくれて逆にうれしかった。ただ前の彼氏のことでそんなに悩んでいるとは思わなかったよ


 簡単な短い返事をするとサキは“やっぱり……”とガッカリしてしまう。

 会話を続けるために彼氏のことを引き合いに出した。


『元カレは良い人だったんだけど、サキはまだ大学生だし……』


シバ> 元カレは卒業するまで待ってくれなかったんだ